T&Dホールディングス
T&D保険グループ

T&D保険グループ SDGsへの思いと取り組み社会的課題に挑戦、共有価値を創造首都大学東京大学院 経営学研究科 教授 松田千恵子氏とT&Dホールディングス 代表取締役社長 上原弘久氏の対談

首都大学東京大学院 経営学研究科 教授 松田千恵子氏とT&Dホールディングス 代表取締役社長 上原弘久氏の対談

環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う「ESG投資」が世界的に注目されている中で、日本企業も社会課題の解決という観点を自社のビジネスに積極的に取り込むことが求められている。また、経営における「共有価値の創造」という考え方も広がりつつあり、国連が設定した「持続可能な開発目標(SDGs)」に取り組む企業も増えている。その一例として挙げられるのが、T&D保険グループだ。企業統治やグループ経営など企業戦略を研究する首都大学東京の松田千恵子教授がT&Dホールディングスの上原弘久社長に、共有価値の創造やSDGs、ESGを意識したこれからの経営について聞いた。

話をする上原氏の写真

特色のある生命保険会社が結集し、グループとしてポートフォリオを形成

松田まずT&D保険グループはどのような企業体でしょうか。

上原T&D保険グループは、太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命の生命保険会社3社を中心に、国内で生命保険事業を営む企業グループです。その持株会社であるT&Dホールディングスの設立・上場から15年になりました。グループ創設の背景には、金融ビッグバンなど金融環境が大きく変わる中、健全性の高い保険会社を軸にグループ経営を強化することで存在価値を高めようという考えがありました。同時に、それは単なる規模拡大のための企業統合ではなく、それぞれ事業モデルを鮮明に掲げた特色のある保険会社が結集することで、国内保険市場の変化に柔軟かつスピーディーに対応することを目指したものだったのです。

松田高齢化など社会の大きな流れの中で、生命保険へのニーズも細分化されてきています。それらのニーズにジャストフィットするようなビジネスモデルのポートフォリオが形成されているのは、大変に意義のあることだと思います。

上原持株会社の下にグループ統合後、15年たったわけですが、先行きの不透明な時代に、保険グループとして次のビジネスをどう見定めるかが問われています。各事業会社のトップとも議論し練り上げた、2019年度を始期とするグループ中期経営計画「Try & Discover2021」では、社会と経済に価値を産む「共有価値の創造」を最大のテーマに掲げました。

上原企業には社会を変える力があり、社会にはより良い企業を育む力があるという考え方は、広く世界の投資家、企業、消費者、地域社会の中で共有されるようになってきました。それをさらに一歩進め、CSRや社会貢献を当社グループの事業とどう結び付けていくか。その座標軸を明確にしたうえで、グループの社会的存在価値を訴えるという狙いがあります。

T&D保険グループの強みを生かした「共有価値の創造」の主なテーマ

SDGsを指針に、左脳と右脳を両立し、社会との共有価値を創造する

上原共有価値創造のための指針の一つとなるのが国連で採決されたSDGsです。目標のすべてを目指すことはできませんが、我々のコア事業とも親和性の高い4つの重点テーマ——①すべての人の健康で豊かな暮らしの実現 ②すべての人が活躍できる職場づくり ③気候変動の緩和と適応への貢献 ④投資を通じた持続可能な社会への貢献——を定め、その取り組みを進めています。

イメージ図

松田SDGsはすべての目標を目指す必要はないのです。しかし、SDGsを意識した最近の経営においては、経済的価値の向上と社会的価値の実現の双方を両立することが重視されています。私は、2つの価値を人間の「左脳」と「右脳」になぞらえ、その両方を働かせるために、左右を結合する「脳梁(のうりょう)」の役割が重要であることを長らく提唱してきました。この「脳梁」の役割を担うのが経営陣ですが、T&D保険グループはそのことをトップが意識している好例だと考えています。

写真

ソーシャルビジネスコンテスト Meetupでの様子

上原ありがとうございます。SDGsへの取り組みを進める中で、持続可能な開発目標をテーマに社会課題を解決するアイデアやビジネスモデルを募集する、第3回日経ソーシャルビジネスコンテストが開催されることを知り、このたび協賛することにいたしました。コンテストの募集要項の中には、社会性、事業性、革新性の3つの要件を満たしている事業ということがありますが、これはまさに私どもの思いと一致します。今回、特に学生部門賞の創設にこだわったのは、コンテストへの協賛を通じて、若い世代との接点を深め、社会の課題に挑戦して社会に価値を創造しようとする次代のリーダーを応援したいと考えたからです。

松田もともとT&D保険グループは新しい取り組みに積極的ですね。国連が支援する「責任投資原則(PRI)」への署名を生保業界で初めて行ったのも御社グループでした。ESG投資についても、業界に先駆けた取り組みを進めていると聞いています。

高齢化社会のニーズに応える商品開発とESG投資

上原生命保険会社は、自身がESG投資の対象として評価される必要があると同時に、資産運用を行う機関投資家としてたえずESGの観点からマーケットに関与する必要があります。ESG投資でいえば、環境保全に役立つ事業への投融資や、持続可能な社会の実現を後押しするプロジェクトへの投資など、グループ全体で幅広い分野での取り組みを進めています。

ESG投資の取り組み事例

太陽生命、大同生命、T&Dアセットマネジメントでは、次のようなESG投資の取り組みを行っている。

環境問題の解決に貢献する
「グリーンボンド」への投資

イメージ図

「スマートエネルギー都市づくり」「気候変動の影響への適応」の施策や、CO2削減等の環境改善効果が期待される都市鉄道利便増進事業に取り組む自治体や独立行政法人の事業を資金面で支援する、グリーンボンドへの投資を実施している。

中南米・カリブ海地域諸国での教育・若年層支援・
雇用支援に貢献する「EYEボンド」への投資

イメージ図

「EYE(Education教育・Youth若年層支援・Employment雇用支援)ボンド」とは、その調達資金が、米州開発銀行のEYEボンド・プログラムの各プロジェクトに充当されることを目的として発行される債券で、同地域の教育・若年層保護・雇用支援を通じた持続可能な社会の実現に貢献している。

上原保険商品の開発でも、社会にとって本当に役立つ新しい商品づくりを心がけてきました。一例を挙げれば、傘下の太陽生命には、認知症にならないための「予防」への取り組みをサポートし、認知症になったときの「保障」にも備える「認知症予防保険」などがあります。また大同生命は中小企業経営者向けの保険をコア事業にしており、その一環として事業承継という社会課題に取り組んだり、健康経営をサポートする各種サービスを提供するなど、ユニークなビジネスを展開しています。

松田広義の意味での保険には、リスクをヘッジするという意味があります。保険があることで、人々はリスクを怖がることなく、新しい課題にチャレンジすることができるようになる。ひいては、それが社会的リターンの増進につながります。

上原生命保険が果たす役割もこの数十年でずいぶん変わってきました。もともとは一家の大黒柱が亡くなったときのための死亡保障保険からスタートしたのですが、類を見ない速さで高齢化社会が進む今、長生きすることで生じるリスクへの対応が社会的課題になっており、生命保険もそのニーズに応えていかなければなりません。保険によって様々なリスクがヘッジされているからこそ、希望をもって生きていける。そういう社会をつくることがT&D保険グループの使命だと考えています。

話をする松田氏の写真

リーダーシップ、スピードある意思決定、コミュニケーションこそが経営の仕事

松田「共有価値の創造」は素晴らしい言葉ですが、そのままだと抽象論にとどまってしまいます。T&D保険グループでは、テーマをきちんと掘り下げて、実際のビジネスに落とし込もうとされていることが印象的です。

上原私自身、先生がおっしゃった「脳梁」としての役割を強く意識していかなければいけませんが、実際の事業モデルの掘り下げは、各事業会社の執行部門が取り組んでいます。ただ、私がホールディングスの社長として心がけていることは、グループ全体の経営と個別事業の役割分担を明確化したうえで、グループ内でのコミュニケーションを活性化し、お客様ニーズの吸い上げや新しいサービス・商品の提供など、事業全体に関する意思決定のスピードを高めることです。

松田リーダーシップの発揮、スピードある意思決定の実行、そしてグループ内外に向けたコミュニケーションの質量を上げること。それこそが今求められる経営者の仕事だと思います。

上原事業の継続のためにはコアビジネスの強化を通した利益拡大や事業ポートフォリオの多様化が必須です。今後も私たちの企業文化と親和性の高い事業には積極的に投資をしながら、保険市場における新しい分野を切り開いていきます。同時に、それらの事業に社会的価値がなければ、社会からは認められません。経済的価値と社会的価値の両立を目指しながら、常に変化する時代に対応できる保険グループとしての存在感を今後とも発揮したいと考えています。

松田千恵子氏と上原弘久氏の写真
松田千恵子
首都大学東京大学院 経営学研究科 教授
全社戦略・財務戦略やグループ経営、コーポレートガバナンスを専門として多方面で活躍。著書に『ESG経営を強くするコーポレートガバナンスの実践』など多数。2011年から首都大学東京教授に就任。
上原弘久
T&Dホールディングス 代表取締役社長
1984年太陽生命入社。運用企画部長、T&Dホールディングス執行役員経営企画部長、太陽生命 取締役 専務執行役員などを経て、2018年4月からT&Dホールディングス代表取締役社長。
ページの上部へ戻る