ERM

ERM(Enterprise Risk Management)とは、資本・収益・リスクを一体的に管理することにより、企業価値の増大や収益の最大化といった経営目標を達成することを目的とした戦略的な経営管理手法のことを指します。

リスクを回避すべきものととらえる受動的なリスク管理と異なり、ERMでは、リスクは排除・削減するだけのものではなく、資本の一定範囲内に抑えて健全性を確保したうえで、収益追求のために取るべきリスクを能動的に選択するものととらえます。

T&Dホールディングスでは、経済価値ベースで資本・収益・リスクを定量的に評価し、健全性および収益性に関する基準を「グループリスク選好」に設定しています。

また、グループ一体でERMを推進するため、グループERM委員会を設置しています。

グループリスク選好を満たす経営計画の策定(Plan)、経営施策の執行(Do)、進捗状況のモニタリング(Check)、必要に応じた計画等の見直し(Action)という「PDCAサイクル」を通じてERMを推進し、安定的・持続的な企業価値の増大を図ってまいります。  

PDCAサイクル

「PDCAサイクル」の図。

グループリスク選好

健全性(資本純分性)の確保 ESR水準:133%以上 収益性(資本効率性)の向上 ROEV:中長期的に7.5%以上 コアROEV:中長期的に5.0%以上 ROE:中長期的に8.0%以上

EV(ROEV)およびESRに関する説明は以下をご覧ください。

EV

当社グループでは、EV(エンベディッド・バリュー)を企業価値指標として、その安定的・持続的な増大を経営の目標としています。

EVとは

一般的に、生命保険の契約は10年、20年、または一生涯、というように非常に長期に渡るため、収益と費用の発生の認識に時間的なズレが生じます。

例えば財務会計上では、新契約の獲得が好調な会社ほど、販売手数料などの初期コストが多く発生し、その年度の利益が減少するように見えます。しかし、保険収支上は、毎年保険料が入ってくるため、時間の経過に伴い徐々に収益が発生していき、長期間で収益をあげる仕組みとなっています。 

販売手数料や医的診査費用など、契約初期に集中的に費用が発生

このような生命保険会社の収益と費用の認識のズレを考慮して、生命保険会社の企業価値を測る方法として「エンベディッド・バリュー(EV)」というものさしがあります。

EVの概念は、「現時点で保有している契約から得られる将来の利益」と「株主資本に実質的な資本とみなせる負債の一部等を加えた資産価値」を合計したもので、株主に帰属すると考えられる税引き後の純資産額を表します。

EV(エンベディッド・バリュー) 貸借対照表などから計算される「修正純資産(株主資本に、会計上は負債だが資本性のある内部留保、有価証券の含み損益などを加えたもの)」と保有契約に基づき計算される「保有契約価値(計算時点の各種前提をもとに保有契約から将来見込まれる利益を計算したもの)」を合算した、株主に帰属すると考えられる税引き後の純資産額。なお、保有契約価値は割引率・運用利回り・事業費率・解約失効率・保険事故発生率など多くの前提条件を置いて算出している点に注意が必要です。

ROEVとは

資本効率性の指標として、一般的に用いられる「ROE(自己資本利益率)」に加えて、当社では、生命保険会社の会計の特殊性を踏まえ、EVを用いて計算される「ROEV(Return on Embedded Value)」を用いています。

当社では、グループリスク選好において、中長期的な目標水準として、ROEV7.5%以上、新契約の獲得によるEV増加を中心としたコアROEVで5.0%以上と設定しています。

※1 ROEVは、EV増加額(資本増減等を控除)/EVの平均残高

※2 コアROEVは、(新契約価値+リスクフリーレート部分の期待収益)/EVの平均残高

ESR

当社グループでは、経済価値ベースの健全性指標としてESR(Economic Solvency Ratio)を導入し、これを一定の範囲内にコントロールすることで、財務の健全性、資本の十分性の確保を図っています。

ESRは、EVと同様の前提で評価した経済価値ベースの純資産(サープラス)を、内部管理モデルを用いて定量化したリスク量(エコノミック・キャピタル)*1で割ることで算出しています。

ESR = 経済価値ベースの純資産(サープラス)/リスク量(エコノミック・キャピタル)

*1 資産運用リスク・保険引受リスク・オペレーショナルリスク等について、バリュー・アット・リスクという指標を用いて、計測期間1年、信頼水準99.5%の損失額として計測

なお、グループリスク選好におけるESRの必要水準133%は、信頼水準99.93%のリスク量をカバーする水準として設定しています。

ORSA(Own Risk and Solvency Assessment)

ORSAとは、自社のリスクと資本等(支払い能力)を比較し、資本等の十分性を評価するプロセスです。
当社グループでは、ERMに基づく経営計画の遂行にあたり、リスクを網羅的に把握し、そのリスクおよび収益を分析・評価し、グループリスク選好に則り、資本・収益・リスクのコントロールを実践しています。

  1. ORSAの基本方針
    当社グループは、ORSAを通じてリスクの把握とソルベンシーの健全性を評価し、経営判断に活用しています。
  2. ORSAの体制
    グループ横断的にERMを推進するため、グループERM委員会を取締役会の下部組織、グループリスク統括委員会を経営執行会議の下部組織として設置し、ORSAを実施しています。
    グループERM委員会は資本・収益・リスクの一体的管理を、グループリスク統括委員会はグループにおけるリスクの統括管理を行っています。
    なお、保険子会社のORSAの体制は、当社に準じており、詳細は保険子会社のHP等をご確認ください。
  3. ORSAの経営への活用
    ORSAの結果に基づき、主に以下のとおり経営活用しています。
    1. 最適なリスクバランスの実現に向けたリスクテイクの方向性やERMの高度化
    2. 国内金利リスクの削減を計画的に推進、政策保有株式を縮減する方針を明確化
    3. 将来のソルベンシー規制および経済資本の充足状況の確認、将来の収益性の確認
    4. 金利上昇・株価下落・自然災害などのストレスシナリオによるストレステストの実施・評価