ERM
ERM(Enterprise Risk Management)とは、資本・収益・リスクを一体的に管理することにより、企業価値の増大や収益の最大化といった経営目標を達成することを目的とした戦略的な経営管理手法のことを指します。
リスクを回避すべきものととらえる受動的なリスク管理と異なり、ERMでは、リスクは排除・削減するだけのものではなく、資本の一定範囲内に抑えて健全性を確保したうえで、収益追求のために取るべきリスクを能動的に選択するものととらえます。
T&Dホールディングスでは、経済価値ベースで資本・収益・リスクを定量的に評価し、健全性および収益性に関する基準を「グループリスク選好」に設定しています。
また、グループ一体でERMを推進するため、グループERM委員会を設置しています。
グループリスク選好を満たす経営計画の策定(Plan)、経営施策の執行(Do)、進捗状況のモニタリング(Check)、必要に応じた計画等の見直し(Action)という「PDCAサイクル」を通じてERMを推進し、安定的・持続的な企業価値の増大を図ってまいります。


EV(ROEV)およびESRに関する説明は以下をご覧ください。
EV
当社グループでは、EV(エンベディッド・バリュー)を企業価値指標として、その安定的・持続的な増大を経営の目標としています。
EVとは
一般的に、生命保険の契約は10年、20年、または一生涯、というように非常に長期に渡るため、収益と費用の発生の認識に時間的なズレが生じます。
例えば財務会計上では、新契約の獲得が好調な会社ほど、販売手数料などの初期コストが多く発生し、その年度の利益が減少するように見えます。しかし、保険収支上は、毎年保険料が入ってくるため、時間の経過に伴い徐々に収益が発生していき、長期間で収益をあげる仕組みとなっています。

このような生命保険会社の収益と費用の認識のズレを考慮して、生命保険会社の企業価値を測る方法として「エンベディッド・バリュー(EV)」というものさしがあります。
EVの概念は、「現時点で保有している契約から得られる将来の利益」と「株主資本に実質的な資本とみなせる負債の一部等を加えた資産価値」を合計したもので、株主に帰属すると考えられる税引き後の純資産額を表します。

ROEVとは
資本効率性の指標として、一般的に用いられる「ROE(自己資本利益率)」に加えて、当社では、生命保険会社の会計の特殊性を踏まえ、EVを用いて計算される「ROEV(Return on Embedded Value)」を用いています。
当社では、グループリスク選好において、中長期的な目標水準として、ROEV7.5%以上、新契約の獲得によるEV増加を中心としたコアROEVで5.0%以上と設定しています。
※1 ROEVは、EV増加額(資本増減等を控除)/EVの平均残高
※2 コアROEVは、(新契約価値+リスクフリーレート部分の期待収益)/EVの平均残高
ESR
当社グループでは、経済価値ベースの健全性指標としてESR(Economic Solvency Ratio)を導入し、これを一定の範囲内にコントロールすることで、財務の健全性、資本の十分性の確保を図っています。
ESRは、EVと同様の前提で評価した経済価値ベースの純資産(サープラス)を、内部モデルを用いて定量化したリスク量(エコノミック・キャピタル)*1で割ることで算出しています。

*1 資産運用リスク・保険引受リスク・オペレーショナルリスク等について、バリュー・アット・リスクという指標を用いて、計測期間1年、信頼水準99.5%の損失額として計測
なお、グループリスク選好におけるESRの必要水準133%は、信頼水準99.93%のリスク量をカバーする水準として設定しています。